2025-07-11
襖にもさまざまな種類があることをご存じでしょうか。襖本体は主に4タイプ、さらに襖紙は5タイプに分けることができます。
この記事では、襖本体の構造による種類の違いや、自宅の襖がどのタイプかを見分ける方法を解説します。あわせて、襖紙や引き手の選び方、知っておくと便利な専門用語まで紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
襖は、間仕切りや押入れの戸として使われる日本の伝統的な建具です。本体の構造によって、主に4種類に分けられます。
● 本襖(ほんぶすま)
● 戸襖(とぶすま)
● ダンボール襖
● 発泡スチロール襖
それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説します。
本襖(ほんぶすま)は、昔ながらの伝統的な製法でつくられる襖です。木でできた組子(くみこ)という骨組みの両面に、和紙を何層も張り重ねてつくられます。下張り、中張り、上張りと丁寧に重ねるので、湿度を調整する機能や、優れた耐久性、断熱性があります。
メリットは、下地がしっかりしているため、何度も張替えが可能な点です。襖紙を張り替えると、長年にわたって使い続けられます。デメリットは、職人の手作業でつくられるため、ほかの種類の襖に比べて価格が高い点です。
戸襖(とぶすま)は、和室と洋室の間に使われる場合が多い襖です。ベニヤ板などの合板を芯材としており、片面が襖紙、もう片面が壁紙や木目調のシートで仕上げられます。和室側からは襖に見え、洋室側からはドアのように見えます。
メリットは、本襖と比較すると襖紙が破れにくく、衝撃に強い点です。デメリットは、芯材が合板なため、調湿性は期待できない点です。張替えは可能ですが、下地の状態によっては、本体ごと交換になる場合もあります。
ダンボール襖は、芯材にダンボールを使用した襖です。組子の代わりにダンボールを使い、両面に襖紙を張って仕上げます。
メリットは、材料費が安く大量生産が可能なため、低価格な点です。アパートやマンションなどの賃貸住宅で広く採用されています。軽量で扱いやすいです。
デメリットは、耐久性が低い点です。ダンボールは湿気に弱く、反りや歪みが出やすい傾向があります。一度穴が開いたり破れたりすると修復が難しく、基本的には本体ごと交換になります。
発泡スチロール襖は、芯材に発泡スチロールを使用した襖です。組子の代わりに発泡スチロールを芯材としています。
メリットは、ダンボール襖よりもさらに軽量で、断熱性に優れている点です。価格も安価なため、賃貸住宅や建売住宅で多く見られます。
デメリットは、湿気に弱く耐久性が低い点です。衝撃にも弱く、へこみや傷がつきやすいです。修復は難しく、張替えには向いていません。汚れたり破損したりした場合は、本体を交換します。
自宅の襖の種類は、触感や音、重さで見分けましょう。
襖の表面を軽く押してみましょう。本襖は、中の組子がある部分とない部分で、弾力が異なります。組子のある場所は硬く、ない場所は少しへこむ感触があります。
一方、戸襖は芯材がベニヤ板なので、どこを押しても硬く、しっかりとした感触です。ダンボール襖や発泡スチロール襖は、全体的にやわらかく、押すとベコベコとした感触があります。
襖をノックするように指の関節で軽く叩いて、音の違いを聞き分けましょう。本襖は、「コンコン」と乾いた軽い音がします。組子のない場所を叩くと、少し空洞感のある音が聞こえるでしょう。
戸襖は、芯が詰まっているため、「ゴンゴン」と低く鈍い音がします。ダンボール襖や発泡スチロール襖は「ポコポコ」や「ボンボン」などの、軽くて響かない音が特徴です。
襖を少し持ち上げて、重さを確認しましょう。最も重いのは、頑丈な合板を芯材に使っている戸襖です。次に重いのが、木製の組子と何層もの紙でできている本襖になります。
ダンボール襖と発泡スチロール襖はとても軽いです。とくに発泡スチロール襖は驚くほど軽く、女性や子どもでも簡単に持ち上げられるでしょう。
襖紙には、5つの種類があります。
和紙襖紙は、和紙でできた襖紙です。天然素材のため、調湿性に優れています。部屋の湿度が高いときは水分を吸収し、乾燥しているときは水分を放出して、快適な室内環境を保つ手助けをします。
和紙襖紙は、4つに分類され、上から順にランクが高いです。ランクによって質や耐久性、色味、価格が異なります。
1. 本鳥の子(ほんとりのこ)
2. 鳥の子(とりのこ)
3. 上新鳥の子(じょうしんとりのこ)
4. 新鳥の子(しんとりのこ)
本鳥の子は、職人が手作業でつくる手漉き(てすき)で、最高級品です。ほかの3つは、機械でつくられる機械漉き(きかいすき)で、素材が異なります。
和紙襖紙の価格は、比較的リーズナブルなものから高級品まで幅広いです。デザインも白を基調として、無地から伝統的な柄物まで豊富です。
織物襖紙は、レーヨンや絹、麻、木綿などの糸を織ってつくられた襖紙です。糸を織り上げてつくるため、紙とは異なる立体感や高級感があります。
織物襖紙は、糸の種類や織り方によって価格や質感が大きく異なります。レーヨン糸を使ったものが一般的で、光沢があり、デザインも豊富です。絹糸を使った絹織物は、しなやかで上品な光沢があり、最高級品とされています。
耐久性が高く、破れにくいです。人の出入りが多い場所や、小さなお子さまやペットがいる家庭にもおすすめです。織り方によってはホコリがたまりやすい場合があるため、定期的にはたきなどで手入れをするとよいでしょう。
アイロン接着襖紙は、裏面に熱で溶ける接着剤が塗られている襖紙です。アイロンの熱を当てると、襖本体に貼り付けられます。
専門的な道具やのりを用意する必要がなく、手軽に張替えができるため、DIY初心者の方に人気があります。ホームセンターなどで手軽に入手できて、価格も比較的安価です。
ただし、アイロンの温度管理が難しく、温度が高すぎると襖紙が焦げたり、低すぎるとうまく接着できなかったりする場合があります。本襖には使用できない場合があるため、注意が必要です。ダンボール襖や発泡スチロール襖などの、安価な襖の張替えに適しています。
再湿(さいしつ)のり襖紙は、裏面に乾燥したのりが付いているタイプの襖紙です。切手のように、水で濡らすとのりの効果が戻り、貼り付けられるようになります。
のりを準備する手間がかからないため、DIYで人気です。スポンジやハケで裏面を濡らすだけで、簡単に貼り付け作業ができます。
水の量が多すぎるとのりが流れてしまったり、少なすぎると接着力が弱まったりするので注意が必要です。ダンボール襖や発泡スチロール襖などの張替えに向いています。
シール襖紙は、裏面がシール状になっています。裏紙をはがすだけで貼り付けられる、手軽なタイプの襖紙です。
のりや水、アイロンなどの道具が不要で、誰でも簡単に扱えます。汚れた部分だけを隠すための補修用シールとしても活用できます。
ただし、粘着力が強力なため、一度貼るとはがすのが難しく、貼り直しがききません。空気が入りやすく、シワになりやすいため、慎重な作業が必要です。下地を傷める可能性があるため、賃貸住宅や、本襖への使用は避けたほうがよいでしょう。
さまざまな種類の襖紙から、ご自身の目的や好みに合った襖紙を選ぶための3つのポイントを紹介します。
襖は部屋の面積の大部分を占めます。襖紙のデザインは部屋全体の印象を大きく左右します。伝統的な和室にしたいのか、モダンな雰囲気にしたいのか、目指すインテリアの方向性を決めましょう。
落ち着いた空間にしたい場合は、無地やシンプルな柄の襖紙がおすすめです。個性を出したい場合は、大胆な柄物やアクセントカラーを取り入れるのがよいでしょう。
デザインだけでなく、機能性も考えて選びましょう。とくに、小さなお子さまやペットがいるご家庭では、耐久性やメンテナンスのしやすさが大切です。
織物襖紙は丈夫で破れにくいです。表面にビニール加工が施された襖紙は、汚れがつきにくく、水拭きできるためお手入れが簡単にできます。
防炎機能や消臭機能、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを吸着・分解する機能を持った襖紙もあります。部屋の用途や悩みに合わせて、必要な機能を持った襖紙を選びましょう。
自分でDIYして、襖の張替えをしたいと考えている方は、作業のしやすさも重視して選びましょう。
アイロン接着襖紙やシール襖紙は、のりなどの道具を準備する必要がなく、手軽に作業を始められます。のり付けタイプの襖紙は、位置の微調整がしやすく、本格的な仕上がりを目指せます。
襖を開け閉めする際に手をかける引き手も、襖の印象を左右します。襖紙とあわせて引き手も交換すると、統一感のある仕上がりになります。
引き手のデザインは、円形や角形が一般的です。楕円形や動植物をかたどったものなどもあります。
伝統的な和室には、菊や桐などをモチーフにした古典的なデザインがよく合うでしょう。モダンな和室には、シンプルな円形や角形の引き手を選ぶと、すっきりとした印象になります。襖紙の柄や色とのバランスを考えて選ぶとよいでしょう。
引き手の材質は、主に木地と金物です。そのほか、さまざまな材質があります。
桑や桜、竹などの木材でつくられた引き手です。木の温かみと自然な風合いが魅力で、どのような襖にもなじみやすいです。
鉄や真鍮(しんちゅう)、銅などの金属でつくられた引き手です。金や銀、黒などの色があり、重厚感や高級感を演出できます。
陶器製やプラスチック製の引き手もあります。陶器製は独特の質感と色彩があります。プラスチック製は安価でデザインも豊富です。耐久性は金属製や木製に劣ります。
押入れなどの大きな襖には大、中サイズの引き手を使います。間仕切りなどの小さな襖には小サイズの引き手を使います。
引き手を交換する場合は、同じサイズのものを購入しましょう。サイズが合わないと、取り付け穴にはまらなかったり、以前の穴が見えてしまったりする可能性があります。
一般的な襖以外にも、特殊な形や機能を持つ襖があります。3つの特殊な襖を紹介します。
源氏襖(げんじぶすま)は、襖の一部に明かり取りや風通しのための窓が付いている襖です。窓の部分には、障子がはめ込まれたものが一般的ですが、ガラスやすりガラスなどの場合もあります。
部屋を仕切りつつも、光や視線を通したい場所に用いられます。デザイン性が高く、部屋に開放感とアクセントを与えてくれるのが特徴です。窓の形も、角形や丸形、扇形などさまざまです。
太鼓襖(たいこぶすま)は、縁(ふち)が見えないように仕上げられた襖です。通常の襖は木製の縁で四方を囲まれていますが、太鼓襖は縁の上まで襖紙を巻き込んで貼り付ける襖です。
すっきりとしたモダンな印象を与えます。壁面と一体化させたい場合や、スタイリッシュな和室にしたい場合に適しています。ただし、縁がない分、角が傷みやすいです。
けんどん襖は、上下の溝にはめ込んで設置するタイプの襖です。
通常の引き違い戸と違い、簡単に取り外しができます。普段は部屋を仕切っておき、来客時などに襖を取り外して、2つの部屋をひとつの広い空間として使いたいなどの場合に便利です。飲食店や旅館の個室の間仕切りなどにもよく利用されます。
襖には、高さや幅によって専門的な呼び方があります。業者に見積もりを依頼したり、打ち合わせをしたりする際に、紹介する名称を知っていると話をスムーズに進められます。
襖は、高さごとに呼び方があります。
高さが5尺7寸(約171cm)の襖です。
高さが5尺8寸(約174cm)の襖です。
高さが3尺以上5尺くらいまで(約90〜150cm)の、背の低い襖です。
中間よりも背の低い、高さ2尺以上3尺くらいまで(約60〜90cm)の襖です。
高さが5尺8寸(約176cm)を超える、背の高い襖です。
襖は、2枚または4枚を1組として使うのが一般的です。使い方によって呼び方が変わります。
柱と柱の間に、2枚の襖を引き違いで設置する、一般的な使い方です。
柱と柱の間に、4枚の襖を引き違いで設置する使い方です。
襖の種類は、主に下記の4種類です。
● 本襖
● 戸襖
● ダンボール襖
● 発泡スチロール襖
それぞれの構造や特徴を理解し、自宅の襖がどのタイプかを見分けられると、業者との打ち合わせをスムーズに進められます。
部屋の印象を大きく変える襖紙や、細部のアクセントとなる引き手にも、さまざまなデザインや材質があります。ご自身の好みやライフスタイルに合った襖を選びましょう。
ゆたか畳では、千葉県千葉市を拠点に襖の張り替えを行っています。熟練の職人が100%手作業で襖の張り替え、縁や引手の取替えなどのメンテナンスを行います。無料でご相談も承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。